カルロス・アギーレ La música del agua 2018日本ツアーのレパートリーから
(1)アニバル・サンパージョの作品「鳥たちの川」「ラ・カニェーラ」
De los repertorios del Tour japonés 2018 de Carlos Aguirre “La música del agua”
(1)“Río de los pájaros” y “La cañera” de Aníbal Sampayo
作者のアニバル・サンパージョ(1927-2007)はウルグアイ・パイサンドゥー出身。ギターと歌の他、珍しくパラグアイ・スタイルのアルパの名手でもあり、アルパの演奏によるパラグアイ曲集も多数残している。
1939年、12歳の時に兄弟3人でトリオを組みデビュー。1941年にレオナルド・メラーノとデュオを組み、この活動は約30年継続したという。1940年代半ばからフォルクローレの研究にも従事、ラディオ・パイサンドゥーでDJも担当する。その後パラグアイ音楽のトリオやフォルクローレの様々なグループで演奏。1956年、アルゼンチンでソロ歌手として最初のレコードを録音。1964年「鳥たちの川」がコスキン・フォルクローレ・フェスティバルで受賞、1967年にはキューバで行われた「プロテスト・ソング・フェスティバル」に参加、ウルグアイを代表する社会派シンガーソングライターとなり、多くのアルバムを発表。しかし1972年、都市ゲリラのトゥパマロスのためにアルゼンチンとチリから武器を運んだ疑いで逮捕され、軍事政権下の1980年まで9年間を監獄で過ごす。解放後すぐにスウェーデンに亡命、その後ヨーロッパでしばらく活動し、1985年ウルグアイに帰国。1999年カルロス・アギーレ主宰のシャグラダ・メドラ・レーベルからアルバム「デ・アンティグオ・ブエロ」を発表。見事な健在ぶりを示したが、2007年80歳で死去。
“Río de los pájaros”(鳥たちの川)は、アギーレが毎回コメントしていたように、国名および川の名前である「ウルグアイ」がグアラニー語で「鳥たちの住む川」を意味しているので、「ウルグアイ」そのものの意味である。上記の通り、1964年のコスキン祭で受賞した出世作であり代表作の一つ。川で生活する家族の様子が描かれている。本人の録音はソンドール・レーベルのベスト盤でCD化されている。
「鳥たちの川」
ウルグアイはただの川ではない
それは旅をする青空
雲の絵描きよ、私は通りに香る蜜と共に
水辺の恋は行先のない恋
希望のホテイアオイを
川が運んでいく
チュア チュア チュアハハハ
モリバトよ、これ以上歌わないでおくれ
セイボの森が血の涙を流すから
洗濯をするモレニータよ
水辺のナンベイヒメウ(ビグア)よ
スカートをぐるぐる巻くにするんだ
服の洗濯にとりかかるんだ
おまえの母は干し肉を作る
おまえの父は川の上流へ
そしておまえは一人残された
水辺で服を洗濯しながら
もう1曲の“La cañera”(焼酎醸造所)はウルグアイで非常にポピュラーな砂糖黍で作られる蒸留酒カーニャが飲まれるいろいろな場面をユーモアたっぷりに描いた作品。チャマリータというウルグアイ独自の軽やかな形式(リトラルの形式「チャマメ」とは全く無関係)。本人の録音は上記「鳥たちの川」と同じソンドール・レーベルのベスト盤でCD化されており、オリジナル・アルバムは現在AMAZONなどのダウンロードで入手可能。
「ラ・カニェーラ」
悪さをする蒸留酒
俺の貧しさをあたためておくれ
貧しい男は憎しみを吸い込み
金持ちは軽妙に飲む
がんばれ、ドン・パンチョ・ソーサ
嵐を突き刺すんだ
うまい蒸留酒で夢中になるんだ
遠くからミントをもってやってくる
ブラジルの蒸留酒
おまえなら香りでわかるはず
のどにぐっときて
丘を登り始める
入り組んだ鹿毛の蒸留酒は唐辛子のよう
おまえのせいで、なまず(スルビ)が俺の釣り糸を切ってしまった
チャマーラの音楽には
住み込みで働くあのモレーノの8本の指使い
弾くたびに彼の魂を泣かせている
それは伝統的な心だからだ
水筒の中に残り、私の魂を裏返す
家畜泥棒が警察に出くわしたのとピッタリ同じ
戻りたがる蒸留酒よ、俺は小瓶の中のおまえがわかる
上記2曲は入っていないが、Shagrada Medraに残されたアニバル・サンパージョのアルバムもぜひ聞いていただきたい。アギーレはもちろん、パラナーの名ギタリスト、ミゲル・“エル・スルド”・マルティネスも参加している。
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